アシュトンマニュアルに信憑性はある?多くの批判が集まる理由
2016/06/19
アシュトンマニュアルとは、1999年に執筆されたベンゾジアゼピン系薬物の減薬方法についてまとめたマニュアルです。
執筆されて以来様々な言語に翻訳され、その全てがインターネット上に公開されています。
2012年には日本語版も公開され、密かに苦しんでいたベンゾアゼピン中毒患者にとっては、正に救いの手となりました。
→http://www.benzo.org.uk/amisc/japan.pdf
しかしその一方で当時から根強い批判があるのも事実です。
昔も今も、日本の多くの精神科医はマニュアルに批判的な見解を見せています。
特に「精神科は今日も、やりたい放題」という書籍がベストセラーとなった内海聡医師による批判は注目を集めました。
内海医師は薬物治療自体には批判的な見解を示しており、それでいてマニュアルを批判したことが反響を呼んだのです。
議論は当時からずっと続いており、ネット上には肯定的な意見と否定的な意見が溢れかえっています。
そんな現状があり、初めてアシュトンマニュアルについて調べた人はこう思います。
「アシュトンマニュアルって結局信用できるの?」
どの情報が信用できるのかわからず、混乱してしまうのです。
そこでこのページでは批判意見と批判が集まる理由、そして実用性についてまとめ、信用できるマニュアルなのかどうか検討していこうと思います。
見出し
アシュトンマニュアルへの批判まとめ
ネット上の意見を調べ上げたところ、批判には二種類あることが分かりました。
一つ目は「精神科の薬物治療」に肯定的な一般的な精神科医による批判。
そしてもう一つは先に挙げた内海医師のように「薬物治療」に否定的で「断薬そのもの」には肯定的だが、マニュアルの内容に納得できない人による批判です。
それぞれについて、どのような意図と意見をもって批判しているのか確認していきましょう。
まずは内海医師タイプの批判についてです。
薬物治療に否定的だがマニュアルの内容に納得できない精神科医による批判について
こちらを「内海医師タイプ」の批判としてまとめていますが、タイプと言いますか実はほぼ内海医師による批判です。
そもそも薬物治療に否定的な精神科医自体がかなり少なく、その中でアシュトンマニュアルに否定的な意見を持つ医師は内海医師ぐらいしか存在しません。
そんな訳で、内海医師のブログやSNSを参考にしてこちらの意見はまとめていこうと思います。
内海医師はFacebookでこのような意見を述べています。
あらゆる教科書や論文に、薬剤(覚醒剤)と自我の強弱は関係ないと書かれているが、私は批判されても反対だ。現実とは違うきれいごとにはうんざりで、アシュトンマニュアルを嫌う理由の一つもこれ。
この一節とその前後の文章から見るに、内海医師は「断薬とは気合と根性で行うべきものだ」というような持論を持っているようです。(内海医師の文章はやや論理不明瞭で意見が明確でない節があり、一部推測を入れさせて頂きます。)
つまり断薬は一発で行うのが理想であり、薬物を置換したりほんの少しずつ減らしていくのはおかしい!というのが最大の批判点です。
ご存じの通りアシュトンマニュアルはゆっくり減薬ペースと置換法が肝になっていますから、大きな相違があったことになります。
内海医師はこうも述べています。
「麻薬を断薬するのに麻薬と置換しますか?」「覚醒剤を断薬するのに覚醒剤と置換しますか?」と。
つまり内海医師は「ゆっくりとした減薬や置換法は効果がない!」と言っているわけではなく、「そんな方法は人としておかしい!」という意見を持っているようです。
この批判については、同意できる人はあまり多くないのではないかと思います。
内海医師自身もマニュアルの有効性についてはある程度認めているわけですし、絶対に断薬を成功させたい依存症患者にとって、成功率が高い方法を選ぶのは当然のことでしょう。
そして「麻薬を断薬するのに麻薬と置換しますか?」という問いについてですが、麻薬が合法であれば当然そのような方法をとるべきです。
「漸減法と置換法の効果に納得していながらその方法をとらない」という方を糾弾することはできませんが、多くの方は成功率が高い方法を選択すると思われます。
また内海医師にはもう一つマニュアルを批判する理由があります。
それはアシュトンマニュアルが栄養療法をほぼ否定している点についてです。
これについては断薬の常識が変わりつつあることも関係しています。
断薬治療が進んでいるヨーロッパでも、昔は断薬に栄養療法は必要ないという意見が大半でした。
しかし時代は流れ、今では栄養療法の効果が見直され、積極的に活用されています。
これに関しては時代の流れと研究と共に治療法が変わってきた結果ですから、当然の批判ポイントではないかと思います。
薬物治療に肯定的な精神科医による批判について
次はもう一方のタイプの精神科医による批判についてです。
先と比べ、こちらの主張は非常にわかりやすいものと言えます。
代表的な意見は、「このマニュアルはベンゾジアゼピンの悪い部分しか書いていない!」「医師に対して不信感をもたせるようなマニュアルだ!」というものです。
この認識は日本のほとんどの精神科医が持ち合わせています。
日本の精神科医には「精神医療とは薬物を処方することだ!」「ベンゾジアゼピンをはじめとする薬物は治療に大変有効だ!」という思想が根底にあるため、治療におけるベンゾの活用をほぼ否定するマニュアルにはとても賛同できないのです。
肯定すれば自分達の存在価値を否定するようなものですから、当然の反応だと言えます。
つまるところ、多くの精神科医がアシュトンマニュアルを批判する理由は、今の稼ぎを維持するため、職を失わないため、保身のためだということです。
精神医学的におかしい、実用的でない、失敗するリスクが高いなどといった理由ではありません。
彼ら彼女らはあくまで自分のために、自分の領域を侵害するマニュアルを批判しています。
これだけの説明では根拠が薄いですから、もう少し精神医療の実態について深掘らせていただきます。
精神医療の「薬物至上主義」の裏にあるのは、製薬会社と精神科医の癒着です。
製薬会社は当然薬が売れればハッピーですし、精神科医も客が増えて儲けが増えればハッピーになります。
というより、精神科医の場合は薬を処方するしか儲けを出す方法がないので、それ以外の選択肢がないとも言えます。
そのため両者は協力し、医者は通院する患者に片っ端から薬を処方、製薬会社はどんどん新薬を作って精神科医へ売り込んでいます。
要するに、日本の精神医療は薬物を中心に回っているのです。
この「薬物」が何のリスクもないようなものであれば、特に問題もありませんでした。
病院へ行く行かないは自己責任であり、診療代をちょっとばかり損したとしても笑い話で済みます。
しかし現状はそうではありません。
ベンゾジアゼピンをはじめ、非ベンゾジアゼピン、SSRI、処方される代表的な薬は危険性が高過ぎるものばかりです。
危険性とは主に依存性を指します。
処方された薬は依存性があるため、患者は薬を求めて再び病院を訪れます。
そうして通院を繰り返すうち、そんなことはちっとも知らないまま依存症へ道を踏み外していくのです。
気づいたときには既に遅し。
もう薬なしでは生きていけませんから、病院の「常連さん」となります。
そして「常連さん」になったところで精神疾患が治るわけではありません。
精神科医、そして製薬会社は当然このことを知っています。
彼ら彼女らは薬の依存性を利用し、患者を「薬ちゅう」にすることで精神医療業界を回しているのです。
話をアシュトンマニュアルへ戻しましょう。
つまり日本の精神医療にとって、このような海外の「ベンゾジアゼピンは危険である!薬物療法は危険である!」というマニュアルはかなりの脅威になるわけです。
精神医療の実態が暴かれることを恐れ、食いぶちを減らされないために、多くの精神科医は必死こいてアシュトンマニュアルを否定し続けています。
アシュトンマニュアルの実用性について
ここまでの文章から、アシュトンマニュアルに向けられている批判は整合性に欠け、考慮するに値しないということを知っていただけたかと思います。
しかし「批判に整合性がない」=「アシュトンマニュアルには実用性がある」ではありません。
この項では本当に実用性があるマニュアルなのかについて検討していこうと思います。
ここまでの文章を読んでいただければ分かる通り、専門家の意見を信用するわけにはいきません。
そこで誰の意見を参考にするのかと言いますと、必然的に断薬成功者ということになります。
断薬成功者が嘘をつく道理はありませんし、実際に厳しい断薬を経験してきた人々の意見が参考にならないはずもないでしょう。
断薬成功者の意見を探すのは難しくありません。
断薬の経過についてブログで記している人は多いので、いくつかのブログからアシュトンマニュアルについての記述を引用していきます。
それにしてもあまりにも、ベンゾジアゼピン離脱に苦しむ人がネットに多すぎる。苦しまなくてもいい離脱症状に苦しむ人が多すぎる。今回、ベンゾジアゼピン離脱にあまりにもあっけなく成功し、初めて気付いたことがある。断薬成功した人のブログの共通点は、離脱症状で苦しむくだりがほとんど存在していないことである。離脱症状を身体からのシグナルと捉え、離脱のスピードをコントロールする。たったこれだけのことができるかできないかで結果が変わってくる。ただし、遷延化した離脱症状の解消については、私自身経験していないため、分からないことを付け加えておく。
基本、アシュトンマニュアルに従っていただきたい。
ー働きながら断薬より
私は事情があり、一日20錠以上飲んでいた精神薬を一気に断薬しました。それはひどいことになります。精神薬の減・断薬方法には漸減法や隔日法などがあり、アシュトンマニュアルも公開されています。私は決してやみくもに減・断薬を勧めているわけではありません。あくまで一気に断薬せざる負えなかった私の体験を参考にしていただけたらと思い、ブログに記載することにしました。
ーはるのさんぽのブログより
多数派の意見は「徐々に減らしていく」というものですね。
代表されるものは有名な「アシュトンマニュアル」でしょうか。
http://www.benzo.org.uk/amisc/japan.pdfこの114ページにも及ぶマニュアルは、私も断薬初期に熟読しましたが、断薬を望む者にとっては勇気づけられるバイブルですね。
急激な断薬を行った場合、急性で重篤な症状が出る恐れがある。
服薬量を漸減することによって、辛い症状をできるだけ「軽く(無くではない)」することがポイントでしょうか。
多くの断薬をプロデュースされてきた方だけあって、納得できるものです。ー治らんなあ…より
これらが断薬成功者のアシュトンマニュアルに対する意見です。
どの方もマニュアルに肯定的な考え方をされています。
実は意識して批判的な意見を探してみたりもしたのですが、全く見つかりませんでした。
これはアシュトンマニュアルが実用的なマニュアルであるという証拠に他なりません。
ベンゾジアゼピンの断薬ブログに関しては、こちらのページでおすすめを紹介していますので、是非合わせてご覧ください。
まとめ
アシュトンマニュアルには多くの批判が集まっていますが、それらの中に考慮に値するものはありません。
特に薬物療法賛成派の精神科医による批判は、保身のため以外の何でもないため、聞くことすら憚られます。
患者を金儲けの道具として利用する精神科医の意見に耳をかすわけにはいきません。
精神科医の罠から逃れる術をまとめているのがこのマニュアルなのです。
アシュトンマニュアルの実用性は断薬経験者達によって認められています。
断薬成功者のほとんどがマニュアルに肯定的であり、少なくとも否定的な意見を掲げている人はいません。
アシュトンマニュアルは執筆から10年以上経った今でも、確かな有効性と実用性を持ったマニュアルです。